ご挨拶

第28回日本嗜癖行動学会仙台大会にあたって

このたび第28回日本嗜癖行動学会仙台大会開催にあたりご挨拶申し上げます。

本学会のテーマは「ちいさい迷惑 おおきな回復 ~『つながり』のちいさな革命~」としました。

振り返ってみると斎藤学理事長がこの学会を立ち上げたのが1990年で、95年の第6回大会、2005年の第16回大会を仙台で開催し、それぞれテーマを「殴る男(ひと)、逃げない女(ひと)」「暴力問題〜この10年を振り返る〜過去・現在・未来」として主に暴力嗜癖を取り上げました。この間、阪神淡路大震災や地下鉄サリン事件をきっかけに日本はトラウマ概念と向き合わざるを得ない状況になりました。その後、トラウマへの対処としての嗜癖の有りようを、そして暴力を嗜癖として捉えることで見えてくる、DVや児童虐待といった家庭内を始めとする人間関係の暴力性について論じてきました。

そして今回、仙台で3回目の学術集会です。

6年前、当地では東日本震災がありました。被害があまりにも甚大で、被災地域も広範囲にわたり、支援(ケア)する側と被災した(ケアを受ける)側の役割が混沌とし、ともに疲弊するという状況に追い込まれました。その中で、弱い他者同士がつながることで生きのびてきたように思います。そうした消耗戦を強いられる状況は、現在も大なり小なり続いています。

嗜癖は人と人との「つながり」の病です。人とより良くつながりたいがために、様々な方法で力を得て自己治療するものの、ついには孤独を深め破綻してしまいます。その回復において、支援者と当事者の間にある、「ケアする・される」といった関係は一方向ではなく双方向であり、当事者との関係の中で支援者もまた自分自身の対人関係の在り方について向き合わざるを得ず、共に成長を促しあうという結果をもたらします。

この過程(プロセス)は嗜癖臨床という小さな世界にとどまらず、様々な病態に共通する対人支援の方法が、世界各地で生まれているように思われます。フィンランドの「オープンダイアローグ」、フランスの「ユマニチュード」、北海道の「当事者研究」、これらはケアの問題を通して、「人とつながること」の根底に流れている意味を我々に問いかけます。本大会はこれらの実践的な取組みに焦点を当ててみました。

このテーマの由来は仙台出身の元プロボクサーでコメディアンの“たこ八郎”こと斎藤清作さんにあります。アルコールに溺れ亡くなった彼の座右の銘、「迷惑かけて、ありがとう」という逆説的な言葉には、「ケアする・される関係性」の意味を考えさせる力がありました。

共生の知恵が人類の進化に大きく寄与したと言われます。「弱さの力」と「迷惑を掛け合う弱さの結束」が共生の真義と考えます。仙台・宮城の地から心より「弱さの結束」へご案内申し上げる次第です。また、本大会と共催する、仙台市で毎年開催される当事者イベント「第17回アディクション・フォーラム」と併せて皆様のご参加を心よりお待ちしております。

第28回日本嗜癖行動学会仙台大会 大会長 石川 達(東北会病院 院長)